2009年9月29日火曜日

今週の一句 2009/9/20 - 9/26 齋藤朝比古

選者=齋藤朝比古


〔今週の一句〕

割烹着つけて京塚昌子の忌 遥

肝っ玉母さんですね。忌日俳句はこれくらいベタでよろしいかと個人的には思っています。岡本信人さんも若かったなぁ。

 

東京のためいき松尾和子の忌 猫髭

これもベタですが松尾和子さんじゃないと様にならない芯の強さを感じる句です。ためいき漏れまくりで歌う「再会」は名曲です。



齋藤朝比古 さいとう・あさひこ
1965年東京生れ。1993年より石寒太に師事。「炎環」同人。「豆の木」副代表。第21回(2006年度)俳句研究賞。

2009年9月20日日曜日

今週の一句 2009/9/13 - 9/19 小野裕三

選者=小野裕三


〔今週の一句〕

片口のひや酒ふふむ牧水忌 猫髭


俳句は忌日を題にするのが好きです。これは単に俳人たちの性癖の問題というより、俳句という文芸の本質にどこか繋がっていることのように思います。俳句とは「冥界の文学」である、という趣旨の文章を僕は以前に書いたことがあります。少なくとも、僕自身にとっては俳句を捉える時に「冥界の文学」とするのが一番ぴったり来るのです。

やや余談ですが、このネーミングにはヒントになったものがあって、島田雅彦氏が川端康成の小説を評して「冥界で俳句を詠んだような」としていて、これはまた適切な表現だ、と思いました。確かに川端の小説はどれもこれも「冥界で俳句を詠んだような」雰囲気に満ちているのです。そんなわけで、いつの日か「俳句史としての川端康成」という文章を書いてみたいと思っているのですが、これはいまだに果たせていません。

ともあれ、俳句とは冥界的であり、であるがゆえに、忌日と俳句の関係にもやや特殊なものがあります。ただし、逆に言うと俳句の本質に近すぎるがゆえに、忌日俳句は不用意に作るとつまらないものになります。つまらないというか、あまりにも当然すぎる俳句になってしまいます。つかず離れずのバランス感覚を俳句の実作において養う、という意味では、忌日俳句はいい訓練の場になるのかも知れません(僕自身は実は忌日俳句は苦手です)。掲句も、つかず離れずのバランス具合がいいと思います。牧水と言えば酒と旅はつきものではあるのですが、その定番の酒をうまく生きた風景として処理しています。


漆黒の傘やグレース・ケリーの忌 知昭

この句もそんな感じでしょうか。漆黒の傘、いいですね。特に漆黒にぐっと来ました。


小野裕三 おの・ゆうぞう
1968年、大分県生まれ。神奈川県在住。「海程」所属、「豆の木」同人。第22回(2002年度)現代俳句協会評論賞、現代俳句協会新人賞佳作、新潮新人賞(評論部門)最終候補など。句集に『メキシコ料理店』(角川書店)、共著に『現代の俳人101』(金子兜太編・新書館)。サイト「ono-deluxe」

2009年9月13日日曜日

今週の一句 2009/9/6 - 9/12 樋口由紀子

選者=樋口由紀子


〔今週の一句〕

黒澤忌バターナイフのさらに銀  知昭


忌日には蓄積された情報が濃密に詰まっている。この情報を個性と工夫でいかに切り取っていくかが腕の見せ所のようである。

忌日俳句は忌日に収斂してこそが一句の価値なのだろうか。まったく関係のないことを言ったり、飛躍しすぎてはいけないのだろうか。しかし、あたりまえのことをあたりまえに言ったのではおもしろくない、とつい川柳人の習性で思ってしまった。中間がいいとも一概には言えない。右寄りか左寄りか、体重のかけ方の微妙なバランス感覚が顕著に忌日俳句には表われている。

ちなみに忌日川柳というのはあまり聞いたことはない。ひょっとして、どこかにあるのかもしれないが、たぶん一般的ではないと思う。「川柳忌」はあるが、『川柳総合大事典』(雄山閣)によると(「忌日川柳」という項目はなかった。)、歴史用語(今日では見られなくなった用語)に分類されている。川柳の祖と言われ、前句附けの点者(選者)であった初代柄井川柳の忌日で、江戸時代からあった行事とある。

 川柳忌かざる言葉のありやなし   村田周魚

〈黒澤忌バターナイフのさらに銀〉は、ベタなイメージを取り省き、誰も気づかないところをクローズアップしている。忌日の固定化したイメージから、一皮剥いだ感触があったものを選んだ。


〔補〕

廃屋の婚礼箪笥鏡花の忌  春休

口紅の斜めに減つてセバーグ忌  猫髭

千代女忌の酸素一個に水素二個  ameo

ポケットの底の綿屑あんつる忌  ameo

先生せんせいセンセイ去来の忌  野口裕

何ちやつてと君が舌出す海童忌  猫髭

アンソニー・パーキンス忌のシャワー室  ameo


樋口由紀子 ひぐち・ゆきこ
1953年大阪府生まれ。姫路市在住。「MANO」編集発行人。「バックストローク」「豈」同人。句集に『ゆうるりと』『容顔』。セレクション柳人『樋口由紀子集』。共著に『現代川柳の精鋭たち』。川柳Z賞受賞。川柳句集文学賞受賞。「川柳MANO」サイト 

2009年9月5日土曜日

雑談ボード

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