週刊俳句のスピンオフ。忌日俳句をつくるサイトです。
バルテュス忌絵から少女の足が出て 猫髭バルテュスは2月29日生まれなので、92歳で死んだが、実は23歳である。永遠の少年のまなざしを持って描かれた絵は、東京駅のステーションギャラリーで展覧会をやった時は毎晩のように出かけては少女の絵の前で溜め息をついた。わたくしは悲しいくらいの老女趣味で、少女趣味ではないのだが、何と言っても「テレーズ」の足だ。その輝き、清冽さが深緑色のスカートの影に息づく、その影に光る素足のひと刷毛の、そのタッチの、いま掃かれたような。また「猫と鏡」の少女のタイツの水色の、おのずから光を放つ、こんな美しい水色があったのかという、その水色。これらは一秒でも目を離すとまた振り返りたくなるという目の誘惑に満ちていた。
かの子忌にかの子饅頭食べたかり 猫髭いや、そういう饅頭があるというわけではありません。なんとなくあの顔見るとそういう饅頭が食いたくなるようでつい。かの子が小説を書いたのは晩年の三年間だけであるが、いや天才である。あの文体に痺れる。自在闊達、艶にして流麗。見事というほか無い。太郎のど派手な装丁の全集は手が出なかったが、ちくま文庫が全集で出たので買って読んだ。文体で読ませる作家が少ないねえ今は。ああ、また読み返したくなった。何度読んでもいい。
夜の明けぬままに岡本かの子の忌
妄想の春のにこ毛や バルテュス忌
二子には夢の白鳥かの子の忌
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バルテュス忌絵から少女の足が出て 猫髭
バルテュスは2月29日生まれなので、92歳で死んだが、実は23歳である。永遠の少年のまなざしを持って描かれた絵は、東京駅のステーションギャラリーで展覧会をやった時は毎晩のように出かけては少女の絵の前で溜め息をついた。わたくしは悲しいくらいの老女趣味で、少女趣味ではないのだが、何と言っても「テレーズ」の足だ。その輝き、清冽さが深緑色のスカートの影に息づく、その影に光る素足のひと刷毛の、そのタッチの、いま掃かれたような。
また「猫と鏡」の少女のタイツの水色の、おのずから光を放つ、こんな美しい水色があったのかという、その水色。これらは一秒でも目を離すとまた振り返りたくなるという目の誘惑に満ちていた。
かの子忌にかの子饅頭食べたかり 猫髭
いや、そういう饅頭があるというわけではありません。なんとなくあの顔見るとそういう饅頭が食いたくなるようでつい。
かの子が小説を書いたのは晩年の三年間だけであるが、いや天才である。あの文体に痺れる。自在闊達、艶にして流麗。見事というほか無い。太郎のど派手な装丁の全集は手が出なかったが、ちくま文庫が全集で出たので買って読んだ。文体で読ませる作家が少ないねえ今は。ああ、また読み返したくなった。何度読んでもいい。
夜の明けぬままに岡本かの子の忌
妄想の春のにこ毛や バルテュス忌
二子には夢の白鳥かの子の忌
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