2009年12月15日火曜日

今週の一句 2009/12/6 - 12/12 大石雄鬼

選者=大石雄鬼


忌日俳句というと、妙に真面目になる人が多い。その人のことを深く知っていなければダメだとか言う。安易に作ってはいけないという。でも、本当にそうだろうか。他の季語の使い方はそれほどでもないのに、忌日になると、なぜそんなに目くじらをたてるのだろうか。

天気さんは、「忌日俳句を読んでいると、人名俳句とさほど変わらないように思えてくることがある。」と書いているが、私もそう思う。忌日とか言いながら、ほとんど季感などはどうでもよく、さらに言えば、殆どの場合、いつ亡くなったかということさえも知らない。


レトルトパウチ熱し鈴木その子の忌   恵

レノン忌のクレヨンで塗りたくる森  てふこ

雲が雲にぶつかる三波伸介忌   ameo

編集部無人開高健の忌  てふこ

レオナルド熊の忌歯医者さんへ行く  遥

こうやって見ると、いくぶん忌日俳句には暗さがあるように感じられるし、死というものをうっすら意識してしまう。まあ、レノンの場合、忌日でない人名俳句であったとしてもそう感じるだろうが、三波伸介やレオナルド熊や開高健なら、忌日でなければそう暗さを感じないだろう。逆に、充分俳句にされてきた、虚子忌とか、子規忌とか、桜桃忌などの方には、死や暗さというものを感じない。忌日になまなましさが無くなってしまっている。


〔今週の1句〕

レノン忌のクレヨンで塗りたくる森 てふこ

ジョンレノンのことはさほど知らないが、怒りのようなものがこの句に感じられる。というか、ジョンレノンからそのように感じられ、この句を補足しているのかも知れない。森をはみ出るほどに、強く厚く塗られていく緑。レノンと作者がクレヨンを塗られた森を通して、繋がりあっている。


■大石雄鬼 おおいし・ゆうき
1958年生まれ、埼玉県育ち。現代俳句協会会員、「陸」同人、「豆の木」所属、1996年に現代俳句協会新人賞。2008年前に豆の木賞。

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