選者=太田うさぎ
私自身は初心の頃に"○○忌"を作ることに先輩俳人からやんわり否定的なことを言われて以来、忌日俳句にはどうも手が伸ばせないのですが、こうやって亡くなった人びとを思い出して軽い親しみを込めた挨拶を送るのもいいものですね。世の中は生きている人ばかりで出来ているんじゃないんだな、と感じます。
〔今週の一句〕
遅れ髪ひとずぢもなき好江の忌 遥
「ひとすぢもなき」というところが、漫才芸人としての矜持を感じさせていかにも内海好江らしい。シャキっとしたおばさんでしたよね。
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駅弁の豆の三粒や鶏郎忌 ameo
うーん、何だろうか、このいい具合のツキ感は。「豆三粒」というところが、「ミツワ石鹸」の唄云々ではなく妙にしっくりと来て、記憶の底の底に埋もれていた三木鶏郎という名前とCMソングの幾つかが浮かんできたのだった。
Tシャツを干せばはためくゲバラの忌 露結
チェ・ゲバラの名を初めて知ったのはデビッド・ボウイの歌、その後Tシャツのデザインとして見かけるようになった。今でも私の認識はそう大して変わらない。けれど、着込まれて型崩れもしていて、汗も沢山吸い込んできたTシャツ、それが風に強くはためいているのが何か叛旗のようで、ゲバラのイメージに格好よく重なります。
クリストファー・リーヴ忌の空持て余す 露結
スーパーマンとして一躍名を馳せた彼。乗馬事故により車椅子の生活を余儀なくされた晩年のことを考えると、「持て余す」がなんとも切ない。
■太田うさぎ おおた・うさぎ
1963年東京生まれ。「豆の木」「雷魚」会員。現代俳句協会会員。
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